ご挨拶
私は、現役職員時代は公務員(技官)として産業行政の立場から所属省庁の所管する伝統産業の技術支援業務に従事しておりました。対象が地域に根差した地場産業である場合が多いこと、他産業と比較して独特の就労形態が近年まで維持されてきた歴史的経緯から、同業者間の仲間内では技術上の工夫や秘訣を教え合うような気風が続く一方で、技術開発の成果を特許出願等で社会に公開することについては消極的な意識が残っていました。
また、開発技術を特許として権利化し自社の実施権等を確保することは、その技術を独り占めにして他の同業者に実施等をさせないというマイナスイメージに受け止められ、「出願などしないで、あるいは取り下げてみんなでその有用な技術を使おう」という言い方が違和感なく通るような傾向も見受けられました。これは、同業者同士助け合うという、その業界の伝統的気風によるもので、過去の時代においては、あるいは美風であったと言えるかもしれません。
しかしながら、国際化、グローバル化が進行する今日において、諸外国とのヒト、モノの交流の場でこのような意識のままで大丈夫なのでしょうか。知的財産をめぐる状況が、異なる政治体制のもと各国家の産業政策に支配され社会的要請の制約を受けるのは必然でしょう。国際交流の場では、こちら側からの一方的な思い込みの「良識」など通用しないと思われます。国外でも通用する合理的な知財保護意識を備えて対処すること、これは先端的産業に限らずそれ以外の業界においても、もはや今日では避けて通れない要件ではないでしょうか。
さらに、技術開発の成果である発明や御社製品等に使用する商標を特許あるいは登録商標として権利化し御社の実施権等を確保することは、他の同業者に実施等をさせないという排他的効果のみをもたらす訳ではありません。公開した有用な技術を第三者が合法的に利用活用する機会を提供し、社会に於ける科学技術の累積的進歩を促すこと、また登録商標の自他識別機能により商品・役務の出所混同を防ぐことによって御社の顧客各位の利益を保護するという社会的貢献に繋がる効果をも生じているのです。
弊所はクライアント各位が特許権等を取得されるための特許庁に対する手続を代行する業務と共に、地域の在来の業界や伝統産業の業界に於ける知財保護意識の普及啓発面においても一助となることを祈念致しております。
弁理士 川瀨 直樹
略歴
・1969年3月 大阪府立北野高校卒業
・1973年3月 京都大学農学部農芸化学科卒業
・1975年3月 京都大学大学院修士課程農芸化学
専攻修了
・1976年~2010年 大蔵省(現財務省)国税庁勤務
(国税局鑑定官室並びに独立行政
法人酒類総合研究所)
・2011年~現在まで 兵庫県技術アドバイザー
(兵庫県立工業技術センター嘱託非常勤)
・2016年~2020年 国内特許事務所勤務(神戸)
・2020年7月 川瀨直樹特許商標事務所設立
取り扱った知的財産業務
・国内外の知的財産権の取得(特許、商標)
・知的財産権の調査、分析、評価
・中小企業、小規模企業に於ける技術支援(技術開発コンサルティング、知財保護意識の普及啓発)
・講習講師「きき酒の実習と知財保護の話題」(兵庫県)
現役職員時代事績
・国税庁産業行政としての管轄酒類業界(製造、卸、小売)への技術支援
・独立行政法人酒類総合研究所に於ける醸造技術の研究開発
所属団体
・日本弁理士会
・西日本弁理士クラブ
・関西特許研究会(KTK)
・吹田商工会議所
・兵庫県酒造技術研究会
・上田流麹造り研究会
・日本生物工学会
・関西醸友会